自主宣言しないと経審点数が下がる|2026年7月改正でW点はこう変わる
─ 単なる加点の追加ではない。対応しなければ、今期から点数が落ちます。
改正建設業法の全面施行から約5か月。標準労務費(労務費の基準)の導入により、公共・民間を問わず適正な労務費の確保と価格転嫁が業界全体の共通課題となっています。今後は、この水準をベースとした価格交渉ができるかどうかが、各社の利益を左右する重要な焦点になると考えられます。
そのような流れの中、2026年7月1日に経営事項審査(経審)の改正が施行されます。今回の改正はすべてW点(その他審査項目・社会性等)に関するものです。CCUSの配点引き下げと自主宣言の新設が連動した構造になっており、自主宣言を行わなければこれまでと同じ取組を続けていても点数が下がります。制度の全体像を正しく理解したうえで、早めの対応を検討してください。
今回の改正、変更点は4つ
1. 自主宣言制度の新設(+5点)
「建設技能者を大切にする企業の自主宣言制度」(愛称:職人いきいき宣言)がW点の新たな加点項目として追加されます。宣言を行うだけでW点5点の加点となり、元請・下請いずれの立場でも対象です。P点換算では数点程度の影響が見込まれますが、換算係数は改正内容により変動するため、詳細はお気軽にご相談ください。
2. 建設機械の加点対象が2機種追加(9種→11種)
令和6年の能登半島地震における応急復旧工事での活用実績を踏まえ、「不整地運搬車」と「アスファルトフィニッシャー」の2機種が新たに加点対象に加わります。加点の上限(最大15点)は変わりませんが、該当機械を保有している会社は申告内容に漏れがないか確認しておきましょう。
3. CCUSの就業履歴蓄積の配点が引き下げ(最大15点→10点)
これが最も見落とされがちな変更点です。これまで全ての建設工事(民間含む)で実施した場合に15点、全ての公共工事で実施した場合に10点だったCCUSの加点が、それぞれ10点・5点に縮減されます。CCUSをすでに運用している会社にとっても、この5点の減少は自動的に確定します。
4. 社会保険未加入の減点項目が削除
雇用保険・健康保険・厚生年金保険の未加入に対するマイナス評価(合計最大マイナス120点)が審査項目から削除されます。社会保険加入がすでに建設業許可の要件として位置づけられており、経審で重ねて確認する必要性がなくなったためです。社会保険への加入義務がなくなるわけではありませんのでご注意ください。
変更点を一覧で整理すると
| 項目 | 改正前 | 改正後 |
|---|---|---|
| 自主宣言 | なし | +5点(新設) |
| CCUS(全工事) | 15点 | 10点 |
| CCUS(公共工事のみ) | 10点 | 5点 |
| 建設機械 | 9機種・最大15点 | 11機種・最大15点 |
| 社会保険未加入 | 最大マイナス120点 | 削除 |
「何もしなければ点数が下がる」とはどういうことか
今回の改正で特に注意が必要なのは、自主宣言とCCUSの変化を組み合わせて考えたときです。CCUSを全工事で運用している会社が自主宣言もあわせて行えば、CCUSの減点5点を自主宣言の加点5点で相殺でき、改正前後でトータルの点数をほぼ維持できます。一方、自主宣言を行わなければ、CCUSをどれだけ頑張って運用していても5点のマイナスが確定します。これまでと同じ取組を続けているだけでは、気づかないうちに点数が下がっている、ということが起こりえます。
自主宣言制度の概要
宣言の内容は、元請・下請・発注者それぞれの立場に応じた項目から選択します。主な例としては、宣言企業との取引優先やCCUSの利用環境整備(共通)、適切な工期・労務費等での取引(元請・発注者)、技能レベルに応じた賃金支払や月給制・週休2日制(下請)などがあります。取組項目の数によって加点が増えるわけではなく、宣言内容は将来の取組予定を含めて申請することも可能です。ただし取組開始日が到来した後に未実施の場合は建設業法違反となるおそれがあるため、実現可能な内容で宣言することが重要です。
加点を受けるための要件
経審で加点を受けるには、次の3つをすべて満たす必要があります。
- 宣言日(申請日)が審査基準日(決算日)よりも前であること
- 取組開始日が審査基準日(決算日)よりも前に設定されていること
- 経審申請時に宣言書と誓約書を提出していること
宣言書はポータルサイトへの掲載完了後(申請から約1か月)に受領できます。なお、加点の起算点は掲載完了日ではなく申請日(宣言日)です。
誓約書は、設定した取組開始日以降に宣言内容を実施している・または実施する旨を誓約するものです。
つまり決算日までに「申請」と「取組開始日の設定」の両方を終えておくことが必須となります。経審の申請手続き自体は決算後に行うため、宣言だけは決算前に済ませておく必要がある点に注意してください。
今すぐ動くべき理由
加点の可否は、決算日よりも前に「申請」と「取組開始日の設定」の両方を終えているかどうかに尽きます。たとえば7月決算の会社であれば、2026年7月31日(決算日)までに申請を完了し、かつ取組開始日も7月31日以前に設定されていることが必要です。申請はオンラインで完結し、費用もかかりません。
これからの受注戦略を考える
加点幅はW点5点と、数字だけ見れば小さく感じるかもしれません。しかし社会保険の減点項目が削除されることで各社のW点が横並びになり、自主宣言やCCUS・建設機械の保有など加点項目での差がこれまで以上に目立ちやすくなります。対応企業が増えるにつれ、「宣言していないこと自体がリスク」になるフェーズへ移行しつつあると考えられます。
また、経営状況分析の統計においても、業界全体で生産性向上への取組が徐々に成果として表れてきています。今後はデジタル申請(JCIP:建設業許可・経営事項審査電子申請システム)の活用も含め、法改正に迅速に対応できる管理体制を整えることが、これからの受注競争における真の優位性につながるのではないでしょうか。
申請はこちらから
国土交通省「建設技能者を大切にする企業の自主宣言制度」ポータルサイト https://jishusengen.mlit.go.jp/
自主宣言の申請タイミングや自社の経審への影響についてご不明な点は、お気軽にご相談ください。


